Meta(Facebook)は、NFT市場に参入し、メタバースでデジタルアセットを販売することを計画している。 NFTとはNon-Fungible Tokenの略で、デジタルアセットなどモノの所有権を示す証文(Token)となる。簡単に複製できるデジタルアセットにNFTを付加し、ブロックチェインで商取引を実行する。 デジタルアートが破格の価格で取引され、NFT市場がにわかに注目を集めている。 MetaのNFT計画これは Financial Times が報道したもので、MetaはNTF市場に参入し、ここでコレクタブルを販売することを計画している。具体的には、Meta配下のFacebookとInstagramは、利用者のプロフィールにNFTを掲載する機能を搭載する。また、利用者が、これらソーシャルメディアで、NFTを生成することもできる。 更に、MetaはNFTのマーケットプレイスをオープンし、ここでNFTの売買を行う。実際に、Metaが発表したメタバースには、NFTを購買するシーンがあり(上の写真)、最終的には仮想社会でデジタルアセットの販売で使われる。 NFTとはそもそもNFTとは、ブロックチェインで構成されるトークンで、デジタルアセットなどの所有権を示す証文となる。NFTのデータは、ブロックチェインの分散データベースで安全に管理される。 現在、NFTで使われるブロックチェインは「Ethereum」が殆どで、事実上の業界標準となっている。NFTは、Ethereumのスマート契約機能「Smart Contracts」を使い、インテリジェントに処理を実行する。事前に設定されたルール(契約)に基づき、人間の介在無しに、ソフトウェアが売買のトランザクションを実行する。 NFTにより、デジタルアセットの所有権が証明され、デジタルアセットの売買をクラウド上で実行できる。(厳密には、NFTはトークンであるが、今では、NFTが付与されたデジタルアセットもNFTと呼んでいる。) NFTマーケットプレイスNFTの市場規模は400億ドルといわれ、その規模が急拡大している。 NFTはマーケットプレイスというわれるサイトで売買される。この市場のリーダーは、ニューヨークに拠点を置く新興企業OpenSeaで、NFTブームで急成長している。 OpenSeaは、オンラインサイトでNFTを生成する機能を提供しており、クリエータはここでデジタルファイルをNTFに変換する。 生成したデジタルアセットをマーケットプレイスに掲載して販売する。このサイトには、デジタルアートやコレクタブルなど、幅広いNFTが掲載されている。 OpenSeaはEthereumで構成されたシステムで、売買は暗号通貨「ETH(Ethereum)」などで実行される。(下の写真、OpenSeaに掲載されているデジタルアート、希望価格は2 ETH (5,456.42ドル)で、オークション方式で販売されている。) NFTの生成方法NFTは誰でも簡単に制作することができる。 OpenSeaのケースでは、作成画面の指示に沿ってデータを入力していくと、NFTを生成できる。イメージやビデオやオーディオなどをNFTに変換することができる。これらデジタルファイルをアップロードして、NFTに変換するプロセスとなる。 この処理は「Mint」といわれ、デジタルファイルに所有者を証明するトークンを生成する作業となる。生成されたトークンはブロックチェインに安全に保管される。 Mintのプロセスは有料で、利用者は処理費用「Gas Fee」を支払う。生成したNFTをマーケットプレイスで販売するが、作品が売れると手数料を支払う構造となる。 デジタルアートが高値で売れる デジタルアートが高値で売れ、NFTブームが続いている。 先月、NFTマーケットプレイスNifty Gatewayで、デジタルアートが91,806,519ドル(約104億円)で販売された。 これはPakが制作した「Merge」という作品で(下の写真)、コンピュータで制作され、デジタルファイルとして売られた。 ファイルには証明書NFTが添付され、これがアートの所有権を示す。(「Merge」は312,686のユニットから構成され、28,983人が購入した。一つのデジタルアートが312,686のNFTで構成されるという特異な構成。 作品が転売されるごとにトークンがマージ(Merge)し、その数が減り、作品の価値が上がると説明している。) NFT市場の危険性今では、アートやコレクタブルや写真などがNFTで販売され、デジタルアセットが投資の対象となっている。
株式取引とは異なり、NFTへの法規制は無く、トランザクションで詐欺や不正行為が発生しているのも事実である。 生まれたての技術で、新しいビジネスモデルが市場で試されている段階で、NFT購入には高度な判断が求められる。 メタバースで都市開発が始まった(下の写真)。 メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここに現実社会のように街が生まれている。メタバースで土地を購入し、施設を建設し、ビジネスを興す。テーマパークを建設しアドベンチャーゲームを始める。音楽ホールを造るとコンサートを開催できる。 現実社会のデジタルツインともいえる仮想都市で、ビジネスが始まり、メタバースの経済構想が見えてきた。 仮想都市の開発3D仮想空間で都市開発を手掛けているのは Sandbox という新興企業で、メタバースで新しい事業モデルを生み出している。 Sandboxは、仮想社会のゲームを通して、メタバースを開発する手法を取る。個人や企業は、仮想社会でゲームやデジタルアセットを開発し、これらを販売することで収益を上げるモデルとなる。 メガシティメタバースに大都市「Megacities」が建設され、企業や著名人や個人が土地を購入し、事業を始めている。 Sandbox にログインしてマップを見ると、メガシティの見取り図が示される(下の写真)。 土地は区画で仕切られ、その大きさは96×96フィートとなる。 この区画を単一、または、複数購入することができる。大地主はアイコンで示されている。 2021年には、12,000区画の土地が販売され、累計で8,000万ドルの売り上げとなっている。Sandbox全体では、166,464区画整備され、累計で5億ドルの資産を保有していることになる。 自宅を建設土地を購入すると、ここに自宅を建てて、生活することができる。家屋のデザインを決め、提供されているツールで建物を建設する(下の写真)。 屋内には、家具や調度品を配置し、生活できる環境を整える。現実社会と同じように、不動産が値上がりすれば、売って利益を得ることができる。また、著名人の住宅の近くに土地を買えば、値上がりする可能性が高いとも言われる。 事業モデル人気ラッパーのスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)は、メタバースに土地を買い(一つ上上の写真、中央部)、ここに大邸宅を建設した(下の写真)。 庭には広いプールがあり、愛用しているクルマが駐車されている。ここに友人を集めてパーティーを開くことができる。 また、コンサート会場としてライブイベントを開催できる。実際に、スヌープ・ドッグはライブイベントを開催する予定で、そのチケット「Private Party Pass」の販売を開始した。また、スヌープ・ドッグのアバターや、愛用しているクラッシックカーは、デジタルアセットとして販売されている。 このように、メタバースでは、土地への投資、イベントの開催、デジタルアセットの販売で、事業を運営する。 メタバース開発ツール購買した土地に建物を建設し、ビジネスを興すためには、Sandboxが提供しているツールを利用する。 これは、「VoxEdit」と「Game Maker」と呼ばれ、コーディングすることなく、オブジェクトを生成することができる。エンジニアでなくても誰でも使える点に特徴がある。 デジタルアセットの開発 VoxEditはデジタルアセット「ASSET」を生成するツール(下の写真)。 デジタルアセットとは、仮想のオブジェクトで、アバターや衣服などが含まれる。具体的には、ASSETは4つのクラスから構成され、 ・Entity (人間や動物などのキャラクタ) ・Equipment (ゲームで使う刀などの武器) ・Wearable (シャツやジーンズなどの衣服) ・Art (アートワークなどの装飾品) となる。 生成したアセットはNFT(Non-Fungible Token)というトークンに変換される。 NFTとはコンテンツの所有者を証明するトークンで、コンテンツの所有権を示す証文となる。 これにより、コンテンツの取引が可能となり、メタバースでNFT取引がブームとなっている。NFTに変換されたデジタルアセットは、Sandboxのマーケット「Marketplace」で取引される。 ゲームの開発Game Makerはメタバースで様々なアクティビティ「Experiences」を生成するツール(下の写真)。 アクティビティの中心がゲームで、Game Makerは生成したASSETを使ってゲームを作成する。また、ゲームの他に、NFTを販売するギャラリー「NFT Gallery」や、住民が集う施設「Social Hub」を作成するためにも利用する。また、自宅を建設するときもGame Makerを使う。 ゲームの種類既に多くのゲームが開発されプレーされている(下の写真)。 ゲームは二種類に分類され、アドベンチャーゲーム「Action Adventure」とパズルゲーム「Puzzle Games」となる。前者は敵と戦いながら目的を達するゲームで、後者はパズルを解きながら謎を解明するゲーム。これらのゲームは無料でプレーできるが、ゲーム内でデジタルアセットを購買するモデルとなる。 デジタルアセットの販売デジタルアセットの販売サイト「Marketplaces」には、数多くのNFTが掲載され、取引されている。これらはVoxEditで生成されたもので、人気キャラクターやグッズを中心に売買されている。 メタバース向けのデジタルアセットを開発しているLululandは、ゲーム内で使うWearablesを販売している。白色のスニーカー「White Angel」は777.00 SANDで販売されている。ドルに換算すると$3,760.68となる。「SAND」とはSandboxが開発した固有の暗号通貨で、今日の交換レートは1 SAND = 4.81ドルとなる。 クリエーター経済これらのゲームやデジタルアセットは Sandbox が提供するツールで開発された。ツールはNoCode(ノーコード開発プラットフォーム)で、プログラミングの知識なしに、誰でも簡単に使える仕様となっている。このため、クリエーターやデザイナーやアーティストなどが(下の写真)、これらのツールを使ってゲームを開発し、デジタルアセットを生成している。 クリエーターたちはメタバースで事業を興し、収入を得る手段を得た。これは、クリエーター経済「Creator Economy」と呼ばれ、メタバースの新しい経済構想として注目されている。 Sandboxのシステム構成Sandboxは、ブロックチェイン「Ethereum」に構築された仮想社会。 このプラットフォームで、土地やデジタルアセットが売買され、ゲームがプレーされる構造となる。 「SAND」はSandboxが開発した暗号通貨で、メタバース内での決済で使われる。「LAND」はメタバースの一部で、「ASSET」はユーザが生成したオブジェクトで、「GAME」はこれを組み合わせたものとなる。 これらはEthereumで稼働するトークンで、Sandboxはブロックチェインを基盤とするシステムと位置付けられる。現在のSandboxはアルファ版で、2022年第一四半期に正式製品が公開される。 ハイプかリアルかメタバースで土地が高値で取引され、アートギャラリーでNFTの販売が好調である。
インターネットにメタバース経済圏が出現し、新しいビジネスが続々と立ち上がっている。ベンチャーキャピタルは強気の姿勢で投資を進めている。 一方、ウォールストリートは、成り行きをウォッチしているが、慎重なポジションを取っている。メタバースはハイプで終わるのか、それとも、巨大ビジネスとして開花するのか、2022年は節目の年となる。 メタバースで不動産投資が過熱している。メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここで現実社会のように土地が売買されている。 購買した土地に施設が建設され、街が生まれる。値上がりする前に土地を購入する動きが顕著で、仮想都市で不動産取引がブームとなっている。 ただし、メタバースでの土地取引は経験したことのないビジネスモデルで、投資には幅広い視点からの判断が必要となる。 メタバースで不動産投資 メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここに人々が集い交流する。 この仮想社会で都市開発が始まった。まだ、多くの土地は更地で、ここに商業施設やイベント会場が建設され、街が生まれている。 いまここに土地を買っておけば、ビルが建設され(上の写真)、企業が入居し、賃貸収入を得ることができる、という目論見がある。また、将来、土地を高値で売ることもできる。このような背景から、メタバースの不動産投資に注目が集まっている。 メタバースの不動産会社 メタバースで土地を購入するには、”不動産会社”を介することになる。 いま、土地ブームで”不動産会社”の数が増えているが、その代表はDecentraland。同社はアルゼンチンの新興企業で、現在は、カナダのToken.comが買収し、傘下で事業を継続している。 Decentralandは、インターネット上に仮想社会を構築し、ここで不動産を売買するサービスを提供している。また、仮想社会で都市開発を進め、デベロッパーとしての機能も有している。 メタバースを歩いてみると 実際に、開発が始まった街を歩いてみると、殆どが空き地で、その一角に施設が建設され、賑わいを見せている。 Decentralandの仮想都市は3Dゲームを彷彿させるグラフィックスで描写される。 利用者はアバターとなり仮想都市を訪問する。市街地の中心部は「Genesis Plaza」と呼ばれ、ここに商業施設やイベント会場などがある(下の写真)。 店舗や施設でデジタルグッズを購入することができる。また、他のアバターと会話することもできる。 サザビーズが店舗を構えるDecentralandの仮想都市に大手企業が進出を始めた。 イギリスのオークションハウス「サザビーズ(Sotheby’s)」はDecentralandに仮想店舗を設け事業を開始した(下の写真)。 これはロンドンの店舗のデジタルツインで、外観だけでなく内部構造もリアル店舗の複製になっている。仮想店舗はデジタルアートを中心に作品を販売している。 実際に、サザビーズ店舗で開催されたイベント「Natively Digital」が仮想店舗にライブで配信された。 土地の購入 メタバースで土地を購入するには、”不動産会社”であるDecentralandを介すことになる。 土地の基本ユニットはパーセル「Parcel」で、これが購買単位となる(下の写真、最小のマス目)。 購入済みの土地は水色で示され、灰色の部分が購入可能な物件となる。 支払いは暗号通貨「MANA」を使って決済される。また、土地はデジタルグッズであり、その所有権はNon-Fungible Tokens(NFT)で規定される。 現実社会で土地を購入すると、売買契約を結び、不動産の登記をするが、メタバースではこのプロセスがNFTで実行される。 土地の価格は場所により決まり、下記のParcel(赤色の四角)の購買価格は$10,290ドル(日本円 約110万円)。 Parcelの大きさは16 x 16 メートルで、1平方メートル当たり$40.20となる。 土地購買の仕組み Decentralandは土地をブロックチェイン上に構成されるトークンと位置付ける。 企業や消費者は、ここで土地というトークン「LAND」を購入する。 土地はパーセル「Parcel」という単位で構成され、これが最小区画となる。複数の区画を纏めて購入し、これらをマージして私有地というトークン「Estate」を作ることもできる。 決済はDecentralandが開発した独自の暗号通貨「MANA」で行われる。 Decentralandのシステム構造 Decentralandはブロックチェイン「Ethereum」で構築された仮想社会で、ここで土地売買や事業活動を行う。 このプラットフォームで、土地を購入し、建物などを建設する。また、建設した店舗でデジタル商品を販売することもできる(下の写真、スポーツカー販売の事例)。 更に、独自のアプリケーションを開発し、新しい事業を展開することも可能となる。 トークンの種類 Decentralandは土地取引で三つのトークンを運用する:
トークンの中でLANDとEstateはNon-Fungible Token(NFT)で、これがデジタルアセットを所有している保証書となる。また、MANAはFungible Tokenで、暗号通貨として対等に交換することができる。 スマートコントラクト 土地やグッズの売買は、Ethereumのスマートコントラクト「Smart Contract」で規定される。 これはEthereumのアプリケーションで、取引の手順を規定し、売買契約や所有権を規定する。 更に、プラットフォームは、特定の団体で管理されるのではなく、利用者が共同で管理する仕組みとなる。 これは「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」と呼ばれ、Decentralandは分散構造の自立型プラットフォームと区分される。 注意事項Decentralandを訪ねてみると、ここは3D仮想社会で、15年ほど前にブームになった「Second Life」を思い出す。
インターフェイスは似ているが、Decentralandはブロックチェイン基板上のサービスで、システム構造が根本的に異なる。 ここで、NFTなどトークンをベースとする商取引が始まり、新しい市場が生まれると期待されている。 特に、コロナの感染拡大で在宅勤務が続く中、交流の場としてメタバースが注目されている。(上の写真、今年のニューイヤーのカウントダウンは、Decentralandの仮想タイムズスクエアで開催された。) ただし、メタバースでの土地取引は誰もが初めての経験で、実際に購入する際は、先進事例を参考に、ビジネスモデルを理解しながら進める必要がある。 Microsoftはメタバースの技術開発を進め、3D仮想空間におけるビデオ会議システム「Mesh for Teams」を発表した。 このシステムはメタバースに構築されるコラボレーション基盤で、アバターを介してコミュニケーションする(下の写真)。Microsoftは「Mesh」という名称でメタバース技術を開発しており、これをビデオ会議「Teams」に適用した。 Microsoftが考えるメタバースMicrosoftは2021年3月、メタバースを構成する技術として「Mesh」を発表した。 Microsoftは、メタバースをインターネットの新しいモデルと捉えている。メタバースは仮想空間で、ここに人々が集い、交流する場となる。 また、メタバースに、人や物のデジタルツインが生成され、これらを介して、現実空間と仮想空間が連結される。 Microsoftは現実空間と仮想空間の融合をMR(Mixed Reality)と呼び、Meshがこの技術を支えている。更に、MicrosoftはMRヘッドセットとして「HoloLens」を開発し、企業向けに提供している。 Mesh for Teamsとはメタバース上に展開するビデオ会議システムは「Mesh for Teams」と呼ばれ、コラボレーションツール「Teams」をMR空間「Mesh」で運用する構成となる。 Teamsは在宅勤務におけるコラボレーションツールとして、幅広く利用されている。 Mesh for Teamsは、その新機能で、自分のアバターを介してテレビ会議に参加する(下の写真、右側)。 また、企業はMesh for Teamsを使って、会議室やロビーなど、仮想空間を生成することができる。ここに3D仮想オフィスが生成され、社員はアバターを介してここでデジタルに勤務する。 Accentureの仮想オフィスAccentureは既に、メタバース上にオフィス空間を生成し、社員のコラボレーションの場として活用している。 仮想のキャンパスは「Accenture Nth Floor」と呼ばれ、ここに社員が集い、オフィス勤務をする(下の写真、イメージ)。 社員は、オフィスでコーヒーを飲みながら会話を交わすこともできる。 会議室ではプレゼンテーションを行い、また、パーティーを開催することもできる。 仮想キャンパスは、テレビ会議とは異なり、社員同士が出会い交流する場となる。物理オフィスで雑談するなかで、アイディアが生まれるように、メタバースは社員が出合い言葉を交わす場となる。 メタバース・アプリケーションMicrosoft はMeshとHoloLens を使ったメタバース・アプリケーションの開発を進めている。 メタバース・アプリケーションは、場所を超えて共同作業をする空間を構築する。例えば、オフィス内に3D 仮想スペースを構築し、共同作業を進めることができる(下の写真)。 複数の社員がHoloLens 2を着装し、会議室やオフィスに集合し、そこで実物を見ながら製品開発を進めることが可能となる。このアプリケーションはMeshで生成され、HoloLens 2からアクセスする。 メタバースへのアクセス技術Microsoft は、メタバースへのアクセス技術としてMR グラス「HoloLens」を開発した。 現在は、第二世代の製品「HoloLens 2」を出荷しており、これを着装し、現実空間に構築された仮想オブジェクトを操作する(下の写真)。 企業向けのデバイスで、メタバース・アプリケーションと組み合わせて利用する。Microsoft はVR(仮想現実) とAR(拡張現実) を統合した技術をMR(複合現実)と呼び、メタバースにアクセスする基礎技術と位置付けている。 Mesh for Teamsを開発した理由Microsoftは、ポストコロナのワークスタイルはハイブリッドとなり、遠隔勤務が重要な役割を担うと分析している。 遠隔勤務では、管理職が考えるより、仕事を効率的に進めることができるとしている。 一方、社員は、遠隔勤務では、会社の同僚と会えないことが最大の課題だと指摘する。オフィス勤務では、同僚と立ち話ができ、人間関係が深まる。 また、会議では、同僚の素振りから、その場の空気を読むことができた。遠隔勤務では、これら人間関係のウェットな部分が欠落し、社員同士が疎遠になる。 Mesh for Teamsはこれらの問題点を補完するために開発された。 社員はデジタルツインであるアバターを生成し、これらを介して、表情や感情を表し、他の社員と交流する(下の写真)。 メタバースのロードマップMeta(Facebook)はメタバースにソーシャルネットを構築する構想を描いているが、Microsoftはメタバースで企業向けのソリューションを提供する戦略を取る。
その最初のステップがコラボレーションで、社員は3D仮想空間で共同作業を実行する。航空機のエンジンの設計を遠隔地と社員と共同で進めるソリューションを提供している(下の写真)。 Microsoftの強みはAIやクラウドで、Mesh for Teamsでメタバース開発レースに参戦した。 先週、NVIDIAは開発者会議「NVIDIA GTC 2021」で、地球温暖化対策に寄与する新技術を発表した。 これは、地球をメタバースで構築し、ここで気候モデルをシミュレーションし、温暖化対策に役立てるという構想である。 気候モデルは巨大で、新たにスパコンを開発して、これを実行する。しかし、高精度なモデルを実行するにはスパコンでも性能が十分でなく、AIで物理法則を解く技法を導入した。スパコンとAIを組み合わせ、数十年先の地球の気候を正確に予想する。 地球温暖化問題イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26は、世界の平均気温の上昇を、産業革命前に比べ、1.5度に抑える努力をすることを再確認した。 同時に、世界の平均気温は1.1度上昇しており、その影響が各地で広がっていることに警鐘を鳴らした。 今年は、記録的な熱波や豪雨など、気象災害が世界各地で発生している。カリフォルニア州は記録的な干ばつで、大規模な森林火災が続き、気候変動がこれらの災害を加速している(下の写真)。 メタバースでシミュレーションGTC 2021で、CEOであるJensen Huangが、NVIDIAのプロセッサとAIを気候モデルに適用し、地球温暖化対策に寄与する手法を発表した。 これはOmniverseで地球のデジタルツインを生成し、このモデルで地球の気候変動を解析する手法となる。 具体的には、地球の気候モデル(Climate Model)を生成し、これをスパコンとAIでシミュレーションするアプローチを取る(下の写真、イメージ)。 NVIDIAはメタバースの開発環境をOmniverseとして提供している。 気候モデルを生成地球規模の気候モデルを生成することで、世界各地の気候を数十年先のレンジで予測する。 将来の気候を正確に予想することで、危険性を正確に可視化でき、温暖化対策やインフラ整備のための基礎データとなる。 天気予報は短期間の大気の物理現象を予測するが、気候モデルは数十年単位の気候シミュレーションで、物理学、化学、生物学などが関与し、巨大なモデルとなる。 豪雨や干ばつを予測気候モデルを高精度で解析するには、地球規模の水の循環をシミュレーションする必要がある。 これは「Stratocumulus Resolving」と呼ばれ、海水や地表面の水が、大気や雲を通して移動するモデルとなる(下の写真)。この循環が変わると、豪雨や干ばつによる被害が甚大となり、社会生活に大きな影響を及ぼす。 専用スパコンと最新のAI技法しかし、このモデルをシミュレーションするためには、地表面をメートル単位の精度で計算する必要がある。 現行の気候モデルのメッシュはキロメートルで、これをメートルにすると、演算量は1000億倍となり、世界最速のスパコンを使っても処理できない。このため、NVIDIAは気候モデル専用のスパコン「Earth-2」を開発するとともに、物理モデルをAIで解く技術の研究を始めた。下の写真は気候モデルの計算量の増加を示している。 水循環モデル(Stratocumulus Resolving)をスパコンだけで計算するには、2060年まで待つ必要がある。 物理法則をAIで解くこのため、AIで物理法則を解く技法の研究が進んでいる。 気候モデルのシミュレーションとは、物理法則に沿った挙動を可視化することを意味する。 自然界の動きは物理法則に従い、古典力学、流体力学、電磁気学、量子力学などがその代表となる。気候モデルでは流体力学が重要な役割を果たし、流体の動きはナビエ–ストークス方程式(Navier-Stokes Equations)などで記述される。 ニューラルネットワークでこの方程式を解く技法の開発が進んでいる。(下の写真、AIでハリケーンなどの異常気象を予想したケース。) 物理法則をAIで解くフレームワークNVIDIAは物理法則をニューラルネットワークで解くためのフレームワーク「Modulus」を提供している(下の写真)。 Modulusを気候モデルに適用することで、AIでナビエ–ストークス方程式の解法を求めることができる。従来方式に比べ処理時間が大幅に短縮され、AIの新しい技法として注目されている。 このプロセスを専用のスパコン「Earth-2」で実行することで、高精度な気候モデルのシミュレーションが実現する。 気候変動に備える気候モデルのシミュレーションで、数十年先の気候を正確に予測する。
世界の主要都市は、数十年先に起こる気候条件に応じて、インフラ整備を進める。 また、温暖化防止対策を策定する際に、どの方式が一番有効であるかを検証できる。 地球のデジタルツインは、計測されるデータでアップデートされ、異常気象を高精度で予測し、地球温暖化対策の重要なツールとなる。 |